● 絵本とコーヒーのパビリオン ● 〒630-8243 奈良市今辻子町32-5  木〜日・祝日  12:00-19:00(18:30 L.O)  ≫行きかた

店長ブログ

大河津分水

この場所をご存じですか?「大河津分水(おおこうづぶんすい)」は新潟県中部にある人工の放水路です。 日本一の長さを誇る信濃川(千曲川)は、その雄大な流れで多くの恩恵をもたらす一方、昔から度重なる洪水も起こしてきました。そこでこの問題を根本的に解決しようと近代になって計画されたのが、放水路を開削する一大プロジェクトです。 分水は数多の困難を乗り越え1922(大正11)年に完成しました。しかし巨大な水の力は人間の思い通りには治まらず、その後も破損と修復を繰り返しながら現在に至っています。 この大河津分水を訪ねてきました。 例によって地図を眺めていた隊長がふとしたはずみに分水の存在を知り、ぜひともこの目で見ねばならんと言い出したから。 新潟からレンタカーで南へ約50km。目指すは信濃川本流から大河津分水が分かれる起点と、そこにある資料館です。 平日のお昼過ぎで私たちのほかに来館者はいませんでしたが、私たちが奈良から来たと知ると、館員の方がとても喜ばれ率先して館内を案内してくださいました。 4階の展望室へ登ると、まるで湖のように雄大な信濃川を一望できます。二股に分かれている小さな方が本流で、大きな方が分水。人の手でこんなにも大きな川を開削したのかとまず驚かされます。 加えて館員の方がとても分かりやすく分水の歴史や構造、そしてその影響について説明してくださいました。かつての新潟市周辺は広大な湿地帯でたびたび水害に悩まされたこと、そのため昔は「鳥またぎ米(鳥も啄まずに跨いでしまうほど美味しくない米の意)」と呼ばれるほど稲作に難のある土地だったこと、分水のおかげで下流域の乾田化が進み活用できる土地が増えたこと、市街中心部の川沿いにある繁華街も新幹線も高速道路もそういった土地に作られてきたこと等……。いやまったく無知でしたが、文字通りの意味で「この分水なくして現在の新潟はない」のです。そして今日も水の力に抗い、なんとかなだめて安全に暮らせるよう、長期にわたる改修工事が続けられています。 館員さんに勧められ、自転車をお借りして本流に設置された洗堰(あらいぜき)と分水側の可動堰(かどうぜき)も間近に見学してきました。とにかく巨大! 怖い! ゴーゴー流れる水の音に、身体ごと吸い込まれそうで脚が勝手に震えます。こんなものよく作ったな…… 実は大河を大改修して水の流れを変えた場所は、東京や大阪をはじめ日本全国にいくつもあります。そもそも近代以降の大都市の多くは、大規模な治水事業によって活用できる土地を拡張することで発展してきました。中でも大河津分水はその圧倒的な規模と、自然が豊かに残る周辺の眺望から、一世紀近く前の大事業の全貌をリアルに体感できる貴重な場所だと思います。